海外のプライベートバンクサービスを利用されている方々、これから利用される方々への啓蒙活動を中心に行っています。
JFPB(Japan Federation of Private Banking)
ここではあくまでも一般論としての概略となります。プライベートバンクをご利用になる方々の目的や用途、家族環境、語学力、年齢、守秘性の必要度合いなど様々な要素を鑑みて最終的には決定することとなります。
1)最低条件としてOECD加盟国または同程度の国
いずれにしても海外ならばどこの国のプライベート・バンクでもよいと言うことではありません。
世界には多くの国々のプライベートバンクが存在します。一般の方々はまず最低限OECDに加盟をしている国々を選択したほうが無難です。
更にいえばOECDに加盟をしている国々であれば全て同じと言うことではなく、守秘性、税制、地政学的側面などそれぞれの特徴がありそれそれを分析する必要があります。
2)歴史的な背景から来る信頼感や信用が高い欧州のプライベートバンク
例えば歴史的な背景から鑑みた場合にはやはり欧州、特にスイス、リヒテンシュタイン、ルクセンブルグなどのプライベートバンクは様々な側面から見て評価が高いと言えます。
その中でもスイスは世界の個人資産の三分の一が集まっている地域です。最近は守秘性に関しては陰りが出てきており、今後はより透明性の高いサービスやコスト面での効率化が求められています。
3)守秘性の高さ、利便性、手数料等のコストの低く実用性の高いアメリカ
世界レベルで銀行間の顧客情報自動交換が始る中で、世界で唯一これを行わないのがアメリカです。また在留邦人、日系人の人口でも世界で最も多く、現地には様々な専門家が活躍しています。更には透明性、コストの安さ等、資産運用や管理上の実用性では、抜きんでている感があります。特に守秘性を重視する場合にはアメリカがお勧め、ということになります。
4)アジアのスイスを目指すシンガポール
また欧州以外の地域ではシンガポールがアジアのスイスとして個人資産の獲得に熱心な地域であり、その法制度、インフラ、サービスの内容などでも評価が高まっています。
実際に多くのメガバンクやスイスのプライベートバンクが進出し、中国や日本などのアジアの富裕層のための拠点として業務を拡大している実情もあります。
最近は規制強化の結果から最低預け入れ金額が3から5百万ドル以上などと敷居を上げているのと同時に日本人スタッフの減少なども見受けられる。
5)日本からの距離が最も近い香港
同じアジアでは香港も金融センターとしては重要な地域ではありますが、個人を対象としている特にプライベートバンクの観点からはあまり評価が高いとは言えません。
やはりシンガポールと比較をすると現在は中華人民共和国の一地域である点や守秘性などの点から見るとプライベートバンキングという観点からは劣るといって良いでしょう。
6)それ以外の地域
その他中南米のパナマ等が最近注目を浴びている地域ですが、日本人がわざわざこの地域でプライベートバンクの口座を開設する理由はあまりないと言えます。
また国によっては金融制度やインフラが整っていない国や地域もたくさんあるため、上記以外の国や地域での口座開設については普通よりも注意が必要となります。
ユーロ問題は構造的なもの
2008年以降、各国の債務問題により顕著になっている欧州での信用不安の高まりに連れて、大手メガバンクですらもその影響を無視できない状況となっています。
そこで以下にユーロ圏にある主な大手銀行のPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイスランド、ギリシャ、スペイン)政府の発行する国債保有比率を記しておきます。これを見る鍵では、これら大手銀行にはPIIGS債券を大量に保有している銀行が少なからずあり、万が一どこかの国がでも破綻し、それが連鎖するようなことが起きるとすれば、その影響は計り知れないと言えるでしょう。
既に、幾つかの欧州系大手銀行の日本国内プライベートバンキング部門の閉鎖と撤退が決定していたり、「現在閉鎖と撤退の検討中」との噂がひっきりなしに持ち上がっています。
これらの影響を直接受けないように、口座を開設する際には留意しましょう。欧州の金融機関でも、一部の大手銀行及びスイスのプライベート・バンカーズ等が注目されます。
1)COMMERZBANK AG (コメルツバンク)独
資本金額 28,658(100万ユーロ)
69.2%(資本に占める割合)
2)BANCO SANTANDER S.A.(バンコ・サンタンデール)西
資本金額 80,914(100万ユーロ)
62.5%(資本に占める割合)
3)BNP PARIBAS(BNPパリバ)仏
資本金額 85,630(100万ユーロ)
48.0%(資本に占める割合)
4)CREDIT AGRICOLE(クレディ・アグリコール)仏
資本金額52,149(100万ユーロ)
31.9%(資本に占める割合)
5)SOCIETE GENERALE(ソシエテ・ジェネラル)仏
資本金額50,975 (100万ユーロ)
35.9%(資本に占める割合)
6)UNICREDIT S.p.A(ウニクレディート)伊
資本金額 67,703(100万ユーロ)
76.6%(資本に占める割合)
7)BARCLAYS plc (バークレーズ)英
資本金額 72,627(100万ユーロ)
27.9%(資本に占める割合)
「CRS」とは、共通報告基準のことで、各国の口座情報の報告に関する国際基準のことです。アメリカを除くスイスやシンガポールにある自分のプライベートバンク口座の情報が自動的に日本の管轄税務署に開示されるのがまだ先の話だと思っている人も多いようです。
既にゆうちょ銀行や銀行では海外送金・入金にマイナンバーを明記する事を義務付けています。「マイ・ナンバー」というのは英語ではTIN (Tax Identification Number) と呼ばれ「納税者番号」というのがその「正確」な意味です。
今年は既に海外の銀行から『「マイ・ナンバー」と要求される情報を提出するまで、口座は凍結します。』というレターが送付されている方は決して少なくないと思います。「税務申告」や「国外財産調書」をきちんと出していても、同様に情報の提供を要求されます。
この『CRS』での情報開示ですが、2018年から正式に始まります。まだそのインパクトについては未知数な点も多々あります。
星の数ほどある口座情報を管理する仕組みを作るには、相当時間がかかると考える人もいるかもしれません。しかし、今回の仕組みは各国の「納税者番号」を基に全てを電子データ化して、コンピュータで紐づけを行う、という趣旨の物です。原則「マイ・ナンバー」さえあれば瞬時に名寄せ作業が完了します。
この様に来年からは(アメリカを除き)、ほぼすべての海外の金融機関の情報が、日本国内でも管理されるようになります。OECD以外の国でインフラの整っていない国々の金融機関などでは遅延なども予想されますが、それでも時間の問題です。
この守秘性の観点からは、寧ろ海外の口座は目立ってしまう事になるかもしれません。
ですから、もし「守秘性」が重要であれば、今後何処の国でサービスを利用するかは熟慮が必要になります。
2012年9月時点の世界各国と各銀行のクレジット・ディフォールト・スワップ値(CDS値)を参考までに添付しておきます。尚、これらは約1ヶ月前に作成した物で現在の物ではありません。
どちらの値も下落し国としては米国が30ポイントととなって最も破綻リスクが低い国と評価されているようです。また韓国のCDS値が下がってきている点も注目されます。
海外のプライベートバンクを選ぶ際の参考にしてください。
プライベート・バンクを利用する理由は以下の通りと言えます。
なお、OECD加盟国又は同等にあるプライベート・バンクを前提としており、それ以外の地域は基本論外、というスタンスです。
1.資産運用
2.資産管理
3.資産保全・保護
4.ステータス、ブランド、イメージ
5.コンシェルジェ
6.節税
国内のプライベートバンクでも目標は達成可能です。
この項目の中で、日本国内のプライベートバンクに口座を開設しても達成できそうな目標も幾つもあります。
例えば、
1.資産運用
2.資産管理
5.ステータス、ブランド
6.コンシェルジェ
7.節税
等です。
従って、これらが主な目的であれば、わざわざ日本国外のプライベートバンクに口座を開く必要は無いかもしれません。
でも、本当にそうでしょうか?
まず、国内のプライベート・バンクでも提供できるサービスは海外のそれと遜色が無いものでしょうか。特に運用はどうでしょうか。円での運用はまだしも、ドルの運用はどうでしょうか。質を比べてみてください。もちろん国内外かかわらず対費用効果も重要です。
更に、資産保全・保護は?
日本国内の金融機関に保有している財産に、いざとなればプライバシーなんて無いので資産の保全や保護が出来ないのは周知の事実です。ただし、この点では既に殆ど何処の国のプライベートバンクも同じ状況です。しかし、そうでない国も残っています。
最後は質と資産保全、保護と守秘性かもしれません。
資産家や富裕層がプライベート・バンクに求めているものは万国共通の様です。
また、ステータスやブランドが目的であっても、他の目標(運用実績、節税等)があまり芳しくなければ結局は嫌気がさして長続きはしないでしょうし、プライベート・バンクのコンシェルジェ機能にも限界があり、基本的には業者などの紹介で終わることがままあります。