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スイスプライベートバンカー

従業員数と運用預残高でみる「スイス・プライベート・バンカーズ協会」メンバーである無限経営責任性の「伝統的」スイス・プライベート・バンカーズ

従業員数と運用預残高で見る「スイス・プライベート・バンカーズ協会」メンバーである無限経営責任制の「伝統的」スイス・プライベート・バンカーズ

従業員は総数で約655名(20159月調べ、20175月更新)
Bordier & Cie (200人)        運用預残高約1.2兆円
Rahn & Bodmer CO (200人)      運用預残高約1.4兆円
Reichmuth & CO (80人)                運用預残高約1.0兆円
Baumann & Cie (65人)                 運用預残高約0.4-0.6兆円(推計)
E. Gutzwiller & Cie ( 60人)      運用預残高約3,000-5,500億円(推計)
Gonet & Cie (30人)         運用残高約1,500億円~3000億円(推計)
→プライベートバンカー脱退、つまり有限責任組織へ改組。

Mourgue d’Algue & Cie ( 20人) 運用預残高約1,000~2000億円(推計)

比較的大手であったジュネーブのピクテ、ロンバー・オーデェ、ミラボーが有限責任可し、ウゲリンがアメリカからの追徴により生産したため、最大でも200人程度の従業員を雇用し、その他は100人にも満たず海外展開すらしていないことが良く分かる。

できればBordierまたはRahn & Bodmer程度の規模が望ましいが、この中の一つは最近日本人向けのサービスを全て中止予定と報告されている銀行もある。             (調べ:ジェイケイウイルトンインベストメンツ

スイス銀行の守秘性

来年からのCRS(共通標準報告基準)のスタートを控えてスイス銀行では、既存客に対してコンプライアンスに関する手続きが活発化しています。既に口座を開いている顧客にもマイナンバー、最新の認証済みパスポートなどの写し、光熱費等の請求書元本等の提出が義務付けられており、これらが欠けると提出されるまで口座は凍結されることになります。

こう云った手続きに嫌気がさしてくる顧客もいるようです。日本で納税はしっかりしていても気持ちの良いものではありませんから。

来年からスイスやシンガポールの金融機関に口座を保有する日本在住の顧客の情報が、その顧客の管轄税務署と電子データとして毎年自動的に提供されることになります。

そう、スイス銀行の最大の魅力で、鉄壁だった「守秘性」は既に過去の遺物なのです。

スイスに口座を持てば、その情報は管轄税務署に自動的に提供されるのです。管轄の税務署からすればこういった納税者は目立つことになります。これは、決して好ましい事では無いでしょう。特に人口の少ない管轄では際立ちます。

それでは「スイス銀行」の現在の魅力は何でしょう?

すばり、それは「ブランド」と言えます。

今までは主な魅力は以下のとおりでした。

1)守秘性

2)世界中の商品へのアクセス

3)フレキシビリティ

4)ブランド (欧州の永世中立国、高級時計、アルプス山脈、等へのあこがれ)

しかし、既にお伝えした通り、1)の守秘性は過去の遺物になり、2)のフレキシビリティもほぼ同じです。残るは3)世界中の商品へのアクセス、4)ブランド、の2つです。しかし3)に関してはスイスの銀行でなくともアメリカやシンガポール等主要な国の金融機関でも提供しています。

従って、残るは4)のブランド、という事になるのです。

スイスなどに銀行訪問も兼ねて観光の際に銀行担当者に色々な面倒を見てもらう、という事に価値を見出す顧客も少なくなりません。

20年間以上も資金を預けて収益はほとんど無かった、もしくはややマイナスという結果でも取り敢えずは満足、という事だと思います。もしこういった、スイスでの観光案内やその他コンシェルジュ・サービス目的であればスイス銀行は今でもその期待に応えてくれるでしょう。

しかし、守秘性も無くなった今、それや運用の収益をサービスの軸として、期待するのであればスイス銀行は良い選択肢ではありません。彼らの証券売買手数料や管理手数料は決して安くはありませんし、結局はこれは自分で支払う事になるのですから。

変わりゆくスイスのプライベートバンク②

ホワイトマネー戦略

今までスイスにおいては他国で申告などをしていない資金については国内では合法という扱いでその守秘義務を堅守してきたが、2012年のFATF金融活動作業部会の声明に従い、その扱いを国際的な基準に合わせる事となっている。

つまりはスイス国外であっても税務面で問題がある資金については今後はグレーでは無く黒として扱う方向で調整を進めている。

これに加えてテロ資金やマネーロンダリング等についてもより一層厳しく対処することとなる。

ちなみに、「マネーロンダリング」の意味は各国当局に無申告の資金をわからないように送金をしたり管理することではなく、麻薬売買、人身売買、武器販売その他、非合法な活動をして得た資金を、あたかも合法的に得た資金の様にする事である。

http://www.oecd.emb-japan.go.jp/kiso/4_5.htm

本来ならば門外不出のような国際金融業界における様々なノウハウ等を探し集めて本にして出版、一般にこれらのノウハウ等を切り売りすることで作家としての地位を固めた様に見える某氏などはこの言葉の定義を良くとれば広めに解釈しているように思えるが、それは間違いである。

いずれにせよ、スイスがよりこの「ホワイトマネー戦略」を進めることにより、マネーロンダリングやテロ資金に加えて無申告の資金についても今後はより幅広くの網が張り巡らされることになろう。

スイスにおいては既に大手を含めて多くの銀行で新規の顧客の口座に関しては自己申告ではあるが、自国で税務申告をしたどうかを宣言しなければ口座が開設できなくなってきている。

スイスの銀行法によるその守秘性は変わっていないがその例外となる分野が増えることとなる。

変わりゆくスイスのプライベートバンク①

今年の5月にOECD加盟国、G20参加国、国際金融センター国、新興国を含めた60か国以上の国々の間で、各国における税務についての情報交換についての取り決めが締結された。

非常に目立たないニュースであるが実はこれによるインパクトは大きい。

この中にはそれぞれの国の当局が自動的に税務に関する情報交換をする条項が含まれているからだ。スイスにおいては今までは裁判所の判断を得るなどの手続きを経てから情報開示をすることは可能であったが、今後は自動的に税務当局同士 で顧客などの情報をやり取りすることになる。

今まで税務的に無申告であった資金が大量にスイスに流れ込んできたわけであるが今後はこの流れにストップがかかることとなろう。

とは言いつつも、税務面以外での点からは守秘性は守られる点やそのほかのメリットは引き続き持続されるのでやはり資産家には魅力的な資金の預け先であることには変わらない。

しかし、今まではこういった性質の資金も受け入れることにより急発展してきたスイスの銀行業界であるが、今後はより資産運用などの業務に軸足を移してゆくことになろう。

「スイス・プライベート・バンク協会」からの正式
プレスリリース

「スイス・プライベート・バンク協会」発足

さて先般お伝えをした通りの内容について、2013年12月4日付けで「スイス・プライベート・バンカーズ協会」から、正式のプレス・リリースがありましたので念のため要約を送付致します。よろしくご参考下さい。

ジュネーブ・プライベート・バンカーズ協会も「スイス・プライベート・バンク協会へ」

スイス・プライベート・バンカーズ協会は機能を縮小し存続

これによれば2014年1月1日をもって「ジュネーブ・プライベート・バンカーズ協会」は発展的に改組となり「スイス・プライベート・バンク協会(ASPB)」となり、「スイス・プライベート・バンカーズ協会」 はその役割を縮小することになります。

・スイス・プライベート・バンク協会(ASPB)」→新たに発足(10行 無限責任にこだわらない未公開、 個人所有の銀行の在スイスの業界団体)

・スイス・プライベート・バンカーズ協会→規模と役割の縮小(11→7行)

・ジュネーブ・プライベート・バンカーズ協会→ASPBに改組(実質吸収)

(以下抄訳) 「ラロシェ、ロンバーオーディエ、ミラボー、ピクテが無限責任から有限責任会社へ改組を決定、との発表を 受け「スイスプライベートバンカーズ協会」と「ジュネーブ

・プライベートバンカーズ協会」は、二つの組織の改変について様々な検討を重ねた。その結果、2014年1月1日をもって現存する「スイス・プライベート・バンカーズ協会」は無限責任パートナ ーシップ制7行の幾つかの利益を代表するためのみの組織と縮小することとなり、会長はボーディエの グレゴリー・ボーディエ、副会長はラーン・ボドマーのクリスチャン・ビンダーマンがつくこととなる。

加えて、「スイス・プライベート・バンク協会(ASPB)」が新しく発足し、スイスにおいて私的(プライベート)に所有されている銀行を代表する団体となり、所属メンバーのためにビジネスを促進する活動を積極的に続けていくこととなる。 ちなみに「スイス・プライベート・バンク協会」の会長はラロシュのクリストフ・グロア、副会長にはピクテのニコラス・ピクテ、その他の委員会メンバーとしてはロンバーオーディエのアンマリー・デ・ウエック、ラーン・ボドマーのクリスチャン・ビンダーマン、そしてボーディエのグレゴリー・ボーディエ、ミラボーのイブ・ミラボーが就任することとなる。(抄訳終わり)

 

「スイス・プライベート・バンク協会(ASPB)」の新規発足メンバー10行

Bordier & Cie,

E Gutzwiller & Cie

Gonet & Cie

La Roche 1787Private Bankers

Lombard Odier & Cie

Mirabaud & Cie

Mourgue d’Algue & Cie

Pictet & Cie

Rahn & Bodmer Co

Reichmuth & Co

以上

スイス・プライベート・バンカーズの大手3行が有限責任のパートナー制に移行する影響(2013年12月3日)

今回のスイス・プライベート・バンカーズ大手3行などの有限責任のパートナーシップへ移行することが分かったわけだが、顧客へのその影響について簡単に説明をする。

・今後の顧客などへの影響

中短期的に大きな影響が出ることは無いと思われる。

・未公開パートナーシップは継続する

なぜなら経営体制が有限責任になったとしても未公開パートナ ーシップであり株式公開をしている会社と異なり、株主からさまざまな圧力を受けることは無いのである。

「個人で銀行を経営している」という事実を「売り」には出来なく なった事にはなるが、ピクテやロンバーオーディエは既にそれな りの顧客基盤があり、ミラボー等はこの2行よりは小さいが将来 的な勝算があって決断と思われる。

・残った7行の希少価値性がますます高まる可能性も

また、今回ジュネーブのプライベートバンカーズ(個人銀行)グループとしてはボーディエ、そして残りの6行だけが無限責任を維持していくことは、残った「個人銀行」としての希少性を高める結果となる可能性もある。 近年、これらの個人銀行は「アセット・マネージャー(資産運用者)」 としての役割を強調することが多く、その役割についてはより個人の資産運用やその付帯業務(資産管理、保護)に注力していくものと考えられる。

・時代の要請とともに合理的な流れ

銀行としては大資本であるほうが有利なことも多いわけだが、「無限責任」という形式自体は経営者には「非常に」リスクが高い一方で、経営者の個人銀行への「経営」に対する「覚悟」を示す事により、それを好む顧客を引き付けることができた。

その意味では銀行がある規模を超えた時点で、有限責任制に転換するというのは「時代」の要請ととらえるとともに、経営面では 合理的な流れである、ともとらえることができる。

しかし、これらの影響について最終的には、「顧客がこれらプライベート・バンカー(個人銀行)に何を期待するか?」にも、大きく依存することも念頭におきたい。

スイス・プライベート・バンカーズの大手3行+1行が有限責任のパートナー制に移行(2013年11月22日)

スイスでもっとも伝統的なプライベートバンクの経営体制と言われている「無限責任制パートナーシップ」を採用してい たラロッシュ、ミラボー、ピクテ、ロンバーオーディエが来年(2014年)に有限責任パートナーシップへ移行することが分かった。

メンバーであったウェゲリンが2012年のアメリカにおける脱税ほう助による訴追と多額の罰則金請求を受けて廃業をした事件を経て、無限責任制を採用していた11行のプライベートバンクの中で世界的、特にアメリカに事業基盤を持つプライベートバンクの経営陣は、無限責任のリスクを軽減すべく新しい経営体制を模索していた。   

その結果、大手の3行(ピクテ、ロンバーオーディエ、ミラ ボー)とラ・ロッシュが有限責任パートナシップ制に移行することが決まった。これにより「スイス・プライベート・バンカーズ協会」のメンバーは7行だけとなり、脱退する4行は新たスイス・プライベ ートバンク協会を他の7行とともに立ち上げることになる。無限責任制を採用していた中で最も大手だった3行が有限責任制となり、無限責任を採用する伝統的なスイスのプライベートバンクの数はますます少なくなる(7行)ことになった。   

無限責任制を採用する最大手となるボーディエを含む 残った7行は今後も富裕層に絞ったサービスに特化するものとみられる。

スイスの最も伝統的なプライベートバンカー
(スイス銀行)とは?

スイスには「スイス・プライベートバンカーズ協会」という組織があります。 

顧客の資産保全及び資産運用を業務の中心に据えるプライベートバンカーの義務及びその位置付けを明確に規定することを目的に、1934年に設立されました。スイスにおいては同年、スイス銀行法が施行されておりプライベートバンカー(プライベートバンク)が誇る長い伝統を法的にも擁護しようという国家的意図を見て取ることができます。

同協会の本部はジュネーブにあり、老舗のプライベートバンカーを中心に14行がメンバーとなっています。協会の最高意思決定機関は委員長、副委員長を含む6名からなり、スイスの多様性を反映して会長職はフランス語圏出身者とドイツ語圏出身者が交互に担う慣わしとなっています。

 

・プライベートバンカーズ協会の目的

協会設立の趣旨は会員のバンカーが顧客に提供する高水準なサービス内容の維持にあります。具体的には主な使命として次の6項目を挙げています。

  1. プライベート・バンキング(プライベートバンク)業界を代表して国内外の金融当局と折衝
  2. 金融行政、関連法案について政府に提言
  3. 他の主要業界団体との積極的な意見交換の実施
  4. 世界の金融センターとしてのスイスの位置付けの維持に注力
  5. グローバル規模でプライベートバンカーのイメージ向上を推進
  6. 顧客にデメリットとなるような短期的な会員間の過当競争を抑制

 

・「プライベートバンカー」と名乗れるのは協会のメンバーのみ

日本ではかなり一般的かつ漠然と「プライベートバンカー」を名乗るケースが見受けられま す。しかし、これは少なくともスイスの国内では間違った意味となってしまい、法律に触れる事となります。スイスでは「プライベートバンカー」の定義が厳格に決められており、それを名乗るにはスイス・プライベート・バンカーズ(プライベートバンク)協会のメンバーでなければならないことに留意することが重要です。

さて「プライベートバンカー」という名称の利用は、スイスでは法的に明確に制限されてい る事を前回説明しました。それではどんな条件を満たせばこの「プライベートバンカー」とを名乗る事ができるのでしょうか? 基本的には以下の条件を満たして無ければなりません。

  • 条件1:個人経営、合名会社、合資会社、もしくは株式を発行しているパートナーシップ形態で設立登記済みの金融機関であること
    →パートナーの少なくとも一人が無限責任を負う事
  • 条件2:無限責任のパートナーもしくは他のパートナーの過半数がスイス国民であること
    →スイス人による経営である事
  • 条件3:無限責任のパートナーが最低3年間は同協会メンバーの経歴を有すること
    →プライベートバンカーとしての実績を持つ事
    これらの条件をクリアーを上で初めて「プライベートバンカー」の名称を名乗る事が出来ます。