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第3回:日本の富裕層が海外のプライベートバンクを利用するメリット

   2回で解説したように、共通報告基準(CRS)の施行によって、海外のプライベートバンクの守秘性を前時代のように確保することは難しくなりました。

では、2022年現在において、資産防衛策として海外のプライベートバンクを利用するメリットとは何かが、気になるところだと思います。

今回は、日本の富裕層が海外のプライベートバンクを利用するメリットについて解説していきます。

 

海外プライベートバンクを利用するメリット

   まず大前提として、海外に資産を保有しておくことで、第2回で述べたような日本の様々なリスクからの隔離が可能です。もちろん、日本に居住している個人として口座を保有するわけですから、日本に付随する物理的なリスクしか払しょくすることはできません。日本の金融システムが何らかの理由(例えば長期にわたる停電、銀行に取り付け騒ぎが起こる、大きな金融危機が国内で生じる等)により、機能不全に陥るような状況はあり得るでしょう。

しかし、日本の金融機関ではなく海外にある金融機関に口座を開き、そこに資金を入れて運用や投資をするのですから、日本に付随するリスクをある程度やわらげることが可能です。 

  その上で、海外プライベートバンクのメリットとしては主に、日本の金融機関にないサービスを利用できる点、そして諸経費やコストが安価な点という、2点が挙げられます。

 

―日本の金融機関にはないサービス

   第一に、海外のプライベートバンクには日本のプライベートバンクが提供していない様々なサービスがある、という点が挙げられます。以下、簡単に記述します。
 

 ①【グローバルスタンダードなサービス】
   海外のプライベートバンクは日本のローカル・ルールに縛られず、基本はグローバルスタンダード、つまり世界の富裕層と同様のサービスが受けられます。特に投資信託などは昨今、外国籍のものは国内の金融機関ではなかなか購入が困難になっています。

世界の富裕層が利用するプライベートバンクのスタイルは大まかにいえば、アメリカか欧州標準の金融機関に二分されます。日本の標準はあくまでもローカルのもので、日本人以外が利用することはまずありません。一方でアメリカや欧州の基準によるスタンダードは、世界中の富裕層が活用をしているものと言えるでしょう。
 

 ②【ヨーロッパ標準市場へのアクセス】
   アメリカ国内とは異なる米ドル建ても含む市場です。アメリカから見ると規制が緩く、透明性にはやや欠けると言われています。多くの劣後債やCOCO債等はこの市場で発行されています。さらには、世界の金融市場で流通するオフショア・ファンドは、この市場で登録されています。
 

 ③【アメリカ標準市場へのアクセス】
    アメリカ市場はユーロ市場とは異なり、基本的にはそれぞれ乗り合いができないという特徴があります。また、アメリカ市場は投資家保護のために規制が厳しく、世界で最も洗練されている市場であると言えます。
 

 ④【ロンバード・ローン(有価証券担保ローン)】
    アメリカや日本では、主に信用取引を目的としたローンとなります。つまり基本は株式で、あくまでもレバレッジを用いた投資目的の融資となります。

ユーロ市場での金融機関、例えばスイスやシンガポールのプライベートバンクでは流動性の高い金融商品であれば、それぞれ掛目を設定して融資を受けることが可能となっています。

昨今の低金利もあり、レバレッジ効果を活用した投資が可能です。これは目的を問わず純粋な融資を受けることが可能ですし、レバレッジ効果を利用した投資目的の融資も可能です。
 

 ⑤【ヘッジ・ファンドやプライベート・エクイティへのアクセス】
    ヘッジ・ファンドやプライベート・エクイティに関しては、米国では規制が厳しく、100万ドルの金融資産を持ち過去2年間の収入が20万ドル以上である必要があります。アメリカの多くのプライベートバンクでは、こういった商品を提供しない金融機関も多数あります。

スイスやシンガポールではこれらの商品を比較的積極的に提供しています。最低投資金額は10万ドルから50万ドルと金融機関と商品によって異なります。


―有価証券売買等の諸経費やコスト

アメリカやシンガポールのプライベートバンクは全体的に、日本と比較してコストが低いといえます。一方スイスは非常にコストが高い、という印象があります。「スイスのプライベートバンク」にはブランドがあるため、そのプレミアム分高く設定されている、という印象です。この点には利用者はよく気を付けたいところです。