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第5回:「暗号資産」という新しいアセットクラスが果たす役割

 第2回で説明した共通報告書(CRS)による守秘性の崩壊だけでなく、現代において海外のプライベートバンクに押し寄せる新たな実情として無視できないのが「暗号資産」です。

 

ー2010年代から始まったブロックチェーン技術の浸透

ブロックチェーン技術が普及して以降、特にビットコイン等の認知レベルが低かった時代の話です。

  以前の富裕層や資産家は、プライバシーや資産保全を図って、スイスやシンガポールに口座を持つケースも多かったわけですが、ブロックチェーン技術の普及により、この景色もまた様変わりをしたと洞察できます。

  いわゆる「所得や資産隠し」に、ビットコイン等のブロックチェーン技術を活用した暗号資産がより活用されるようになっていると考えるのが妥当でしょう。先進国における暗号資産の取引所は原則、当局の管理下にあります。しかし実際のところ、海外ではそうではない取引所も多く存在しています。

  当局の管理下にない取引所を利用して法定通貨から暗号資産に両替し、例えばですがUSBメモリなどのウォレットに保存すれば、いつでもコンピュータに差し込んで使うことが可能です。

このように、ビットコインのような暗号資産が資金の大きな受け皿になっている現実は、読者の皆さんにとっても想像に易いことでしょう。スイスなどの金融機関が暗号資産に力を入れているのには、こういった事情があるものであろうと推察できます。

現代は、世界中の富裕層の資金が、少なからず暗号資産に流れている時代です。とくにビットコイン、オルトコインで大儲けをした場合には、例えば日本の暗号資産に対する税制を考えると、この流れに沿って資産管理をするという方向性のが自然ではないでしょうか。

世界の国々が必死に資金の流れを管理しようとしている中で、暗号資産という新しいアセットクラスが重要な役割を果たすようになったのです。

 
―引き続き例外であり続ける米国

  世界の超大国である米国にある資産に対して、それ以外の国が確固たる根拠なしに情報を個別に請求する、というのは簡単なことではありません。

現実として、国には「序列」が存在します。原則として未だ敗戦国である日本が、アメリカに対してあれこれと声高に要求できる立場ではないのは容易に想像できますし、諸外国の中でアメリカより優位に立てる国があるかというと、現実には厳しいでしょう。(もちろん、悪質な犯罪やテロなどにかかわる場合はこの限りではありません。)